AKB総選挙、指原1位にみる地方戦略の表れ

昨日は、AKB48の5回目となる選抜総選挙が話題でしたね。
今回は、中間速報で軒並み順位を落とした、前年上位陣の行方が注目されていました。
中でも指原莉乃さんは、中間速報の段階で、前回1位の大島優子さんを抑えてまさかのトップ。
そしてその勢いは本番でも止まらず、結局、指原さんは15万を超える票を獲得。ダントツの1位でAKBの新センターとなったのでした。

一度、AKB通の批評家、濱野智史さんにお話を聞いたことがありますが、ここに至るまでのファンの駆け引きは、すごいものがあるようです。
友人が誰かに一票入れたという話を聞くと、その一票を消すために、こっそり追加でCDを2枚買って自分の推しメンに入れる、というような行動を繰り返しているんですね。

マーケティングにおけるAKB48の戦略は、今ではあちこちで研究されています。
中でも、この総選挙における投票権をシングルCDの付録にする戦略は、音楽ビジネスの根幹をひっくり返すことになってしまいました。
付録のために、一人に何枚もCDを買ってもらうという戦略は、ビックリマンチョコレートと同じですが、それによって、もはや音楽のヒットチャートは、その楽曲の良し悪しを表す指標として成立しなくなってしまったわけです。

こういった戦略は、海外のビジネススクールでもケーススタディとしての取り上げが検討されているというほど、誰もが知るところとなりました。
で、今回、指原さん1位で注目したいのは、AKBのもうひとつの戦略、地方戦略です。
これは、「AKB48白熱論争/玄冬舎新書」で、宇野常寛さんも少し触れられていました。

AKB48の仮想競合は、もはや他のアイドルグループではなく、プロ野球やサッカーなどの国民興行になっていると言われます。
そのプロ野球は、読売グループの新聞とテレビと密着し、テレビの放映権を前提としたビジネスとして成立していました。
それが、生活者の価値観の多様化が進んで、テレビの視聴率が稼げなくなり、行き詰まってきている状況。

一方、サッカーのJリーグは、それを見ながらマスメディアと距離を取って、地元企業のスポンサードで地域密着の興行を育成しようとしてきました。
ただこちらも、ワールドカップの日本代表は話題になりますが、J1リーグの行方が常に注目されるまではいきません。
やはり、地域それぞれのコミュニティはそれほど大きくないんですね。
それでも、プロ野球は、さらに次の興行モデルを模索して、福岡、北海道、仙台などと、地域密着にトライしているわけです。

AKBの場合は、現場とソーシャルメディアで勢力を蓄えた後に、マスメディアに進出し、テレビや雑誌の力で拡散されていきました。
それを経ての地方への拡大戦略ということに、大きなポイントがあるでしょう。
繰り返しになりますが、地域に密着すると、ひとつひとつのコミュニティはどうしても小さくなってしまい、これが地方戦略の悩みどころになります。
しかし、AKBは一度メジャーになったメンバーを地方に分散させたり、入れ替えたり、地元のチームと融合させるという新たな戦略で、これを攻略しました。
これによって総選挙は、CDの売上貢献だけでなく、地方コミュニティを一同に束ねる機能をも持ち始めたわけです。
指原さんの所属するHKTの福岡や、地元の大分でのパブリックビューイングに熱狂するファンを見ていると、地域密着のパワーを感じますよね。

今回は、「神7」が崩れて、指原さん以外にもSKEの松井両名が7位以内に入り、選抜16位までにはSKE、NMBのメンバーが何人も入るという、これまでの歴史からすると大きな転換点を迎える結果でした。
そしてこれらは、マスメディアが報道する単なる「世代交代」という話ではなく、次世代AKBのマーケティングモデルを、地域密着に移行しつつある表れなんだと思ったわけです。

参考書籍は以下です。

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