3分でわかる「ピケティ」

「21世紀の資本」で話題のトマ・ピケティ氏が来日中ですね。
ベストセラーとなった本書は700ページを超えるボリューム。
僕の蔵書ではホイチョイのマンガ「気まぐれコンセプトクロニコル」に並ぶ分厚さです。

池田信夫氏の「日本人のためのピケティ入門」に助けられてなんとか読めた本ですが、ここで無謀にも3分で読めるようにまとめてみようと思います。

Thomas Piketty

本書の主張は、要約するとシンプルです。
20世紀後半以降「資本主義では所得分配の格差が拡大する」傾向があって、それは今後も続くというもの。
つまり、資本主義は不平等を押し進めるという主張です。

それがひとつの不等式で証明されています。
「r > g」
rは株式や不動産などの資本収益率、gは国民所得の成長率です。
労働者がどれだけがんばって収益をあげても、資本家の収益はそれを上回るというのです。
小作人ががんばるほどに、地主はより儲かる仕組みになっているというわけです。

これはなんとなく感じていたことだと思いますが、それがなぜ画期的な主張として迎えられたのでしょう?
これまで資本主義は「富を多くの人に行き渡らせ、所得の分配を進め平等化させる」とされてきました。
しかしこれは、20世紀半ばの例外時代に基づいた理論であり、ピケティ氏は、その理論を10年以上かけた独自のデータ調査でくつがえしたというわけです。

さらに近年、資本主義が格差を一層拡大させることになっている要因がいくつかあります。
たとえば、「教育とテクノロジー」。
高いスキルを持つ労働者は教育に依存している上、近年はどんどんテクノロジーへの置き換えが進んでいます。

それによって、米国などでは「スーパーマネージャー」といわれる、巨額のサラリーを得る大企業の経営者が誕生しました。
彼らは資本家でなくサラリーマンですが、そのサラリーを他に投資することによって資本収益を得ています。
そんなふうに生まれた格差が、「遺産相続」によって累積されてきている。
金持ちの子はいい教育を受けられてさらに金持ちになるという、始めから下駄を履いているわけです。

これら資本主義による格差是正に向けたピケティの提言もいたってシンプルです。
それは、グローバルでの「累進資本課税」。
たとえ一律1%でも、国際社会が協調して統一の資本課税を徴収するということです。
でも、現実的には国際協調での統一課税導入というのは難しいことでしょう。

では、日本ではどのように考えられるでしょう?
日本は、資本収益をあまり株主に還元せずに、企業の内部留保に回すことが美徳であるという文化があります。
この結果、企業の蓄えが超過状態でありながら、資本収益が再投資に回らないので、格差も拡大しない代わりに成長もしないとのことなのです。

最後に僕の意見を加えましょう。
僕は投資銀行で働いていたこともあり、基本的には資本主義、つまり市場とグローバリゼーションの機能を信じています。
これがあるから、民主主義が成り立ち、成長を追求するモチベーションが継続するのだと考えています。(もちろん、ピケティ氏も反資本主義ではなく、それを肯定しつつ、富の透明性を訴えているわけですが)

ただ、僕の書いた「つなげる広告」では、資本主義だけが人の幸せでないことを主張しています。
たとえば、大規模交通事故は多くの人を不幸に陥れる惨事ですが、救助作業や道路清掃などの需要でGDPは加算されます。
人の幸せはGDPでは測れません。
資本主義による格差拡大はピケティ氏によって証明されたのでしょうが、それと人の幸福度はイコールでないということです。

今、ハピネスの概念は、物質的な豊かさだけではなく、文化や精神、公正さ、環境維持などの価値観へ転換しているところです。
格差是正の政策はもちろん進めていただきたいですが、僕自身はお金の格差よりもっと大事な価値観が見つかれば、それで満足だと考えています。

と、こんな感じですが、3分で読むにはちょっと長くなってしまいましたかね?
今日はこのへんで(^^

※本書は漬け物石代わりにもなります。

※あなたが学者ででもなければ、こちらの方がお薦めです。