「価値を見極める力」が大事!

ちきりんさんの新刊「マーケット感覚を身につけよう」を読みました。
うーん、何と言うか、いま僕がこの業界で仕事にしていることがスパッと言語化されていてスッキリすると同時に、「ここまでタネ明かしされるとやりにくいなあ」と思ってしまうものでした。

本書の主張は、「市場で自分の価値を見極める力」は、ロジカルシンキングではカバーできない、これから最も大切になるスキルということです。
一流大学を出て一流企業に10年も勤めながら、「自分には売れる能力がない」と考えて、忙しい仕事の合間に学校に通ったり資格を取得したりする人が増えています。
それも否定はしませんが、実はどんな分野であっても10年も働いたのなら「売れるもの」、つまり「市場で価値のあるもの」は、既に持っているはずなのです。

足りないとすれば、それは「価値のある能力」ではなく、「価値ある能力に気づく能力」です。
個人であっても企業であっても、これからビジネスで必要なスキルは「売れるものに気づく能力」、言い換えれば「価値を認識する能力」だということです。
ちきりんさんの本ではこれを「マーケット感覚」と呼んで、論理的思考の対岸にあるもうひとつの必要スキルだと述べられています。

value

その昔、仕事で必要とされるスキルは「読み書きそろばん」と言われたました。
2000年代にはそれが、「ロジカルシンキング」「英語」「リーダーシップ」「ITリテラシー」などになってきました。
本書では、さらに最近それが変わってきていて、これから求められるのは「マーケット感覚を含めたもっとメタな能力」(具体的なスキルよりもっと上位に位置する汎用的な能力)だと言います。
それが「市場での自分の価値を見極める能力」だということです。

これは「マーケティング」と「マーケット感覚」との比較で説明されています。
マーケティングは、ビジネススクールでは4Pという「Product」「Price」「Place」「Promotion」のフレームワークとして学びます。
しかしいくらフレームワークだけ理解しても、その根底にあるマーケット感覚がなければ、単なる言葉遊びで終わってしまいますよね。

では、「マーケティング感覚」とはどんなものでしょう。
本書では、トヨタ自動車の日本の工場から世界に広まった「カイゼン」が例としてあげられています。

トヨタの海外拠点では、このカイゼンは、「歩留まりを高めるノウハウ」として実践されました。
しかし、本当の「カイゼン」の思想は違います。
日本の工場で実践されていた「カイゼン」は、ノウハウではなく、不断に現場を改善していこうという一人ひとりのワーカーたちの意識です。
そういう現場の経験から得られる市場に対する根源的な理解が、「マーケティング」ではなく「マーケット感覚」だというわけです。

最近は、サッカーやフィギュアやテニスなどのスポーツ番組の放映権が高騰しています。
その理由は、ドラマやバラエティーなどが録画視聴されることに対して、スポーツにはリアルタイム視聴での価値があるからです。
これに気づけば、テレビというビジネスの価値も変わってきます。
「テレビを観る人が減っている。テレビビジネスは厳しい」と考える人がいる一方で、「リアルタイム視聴のコンテンツを見つければテレビの未来は明るい」と考える人が出てくる。
「価値を見極める力」によって、テレビビジネスで見える未来の姿が変わってくるわけです。

僕の仕事も、このように「マーケット感覚でクライアント企業が持っている価値を再定義していく」というものです。
クライアント企業に見えている「わが社のこんな価値」があるでしょう。
でも、マーケット感覚で見極めると、その価値はこれまで考えもしなかったもっと大きな価値を秘めている可能性があります。
そんなことを見つけ、クライアント企業のパートナーとして具現化してくサポートをしています。
なので本書に「タネ明かしされた」と思ってしまったわけです(汗。

さて、本書の最後にもありますが、世の中のいろんな変化、例えば、少子化や高齢化などは悪いようにばかり捉えられがちです。
でも、新しいビジネスは、医療や介護、食品や小売り、旅行やアパレル、ロボットやITまで、この変化にどんどん対応し、より豊かな未来を創っていこうとしています。

つまり、個人でも企業でも、マーケット感覚を身につけるということは、変化が怖くなくなるということです。
急速な社会の変化に不安を感じてビクビクするか、逆にチャンスを見出してワクワクするか、ということです。
環境の変化に応じて「価値を見極める力」があれば、それを楽しめるというわけなのです。

ちなみに、ちきりんさんは、「マーケット感覚をもってこれから外国語を学ぶならば、英語ではなく、2億5千万人の人口とその88%をイスラム教徒にもつインドネシア語を学ぶ」と述べています。
18年前にインドネシア大学に留学していた僕からすると「価値を再定義するときが来たぞ!」とチャンスを感じてしまいました。
今日はこのへんで(^^