「あることがない」を見つけるシャーロック・ホームズの視点

久しぶりに時間ができて、シャーロック・ホームズなんかを読み直したりしていました。
僕はビジネス書ばかり読んでるように思われがちですが、文学も結構読みます。
特に推理小説の古典は、クリエイティブな視点を養うのに、すごく有益だと思うんですよね。

シャーロック・ホームズの視点は、野口悠紀雄さんのエッセイ「超整理日誌」にも取り上げられていますし、僕の著作「学校でも会社でも教えてくれない企画プレゼン超入門」でも紹介しています。

holmes

有名なのは、「白銀号事件」ですね。
イギリスの競馬界が舞台で、「白銀号」という競走馬にまつわる話です。

白銀号の調教師がレースの直前に謎の死を遂げます。
事件を依頼されたホームズは、トレードマークのルーペを片手に現場検証を始めます。
そして、関係者が見向きもしないような情報を丁寧に集めながら、ひとつの事実に光を当てるのです。
それは「番犬が吠えなかった」ということ。

ここでホームズとグレゴリー警部のやりとりがあります。
「あの晩の、犬の不思議な行動が解りますか?」
「えっ、犬は全然何もしなかったはずですが」
「そこが不思議な行動なんですよ」

ホームズが注目したのは、番犬が何もしなかったということです。
もし侵入者があれば、犬は吠えたはず。
それがなかったということ。
ホームズはこれを掘り下げていき、身内の犯行であることを突き止めます。

ホームズの視点から学べることは、「あるはずのものがないこと」を見つける力です。
普通、「ないはずのものがある」場合は、大抵の人は気づきますよね。
安定推移のグラフがいきなり変化するとおかしいと気づきますし、官邸にドローンが落ちていてもおかしいと気づきます。

しかし、「本来あるべきものがない」ということを見つけるのはなかなか難しいものです。
そして「あるべきものがない」という情報の方が、価値があることが多い。
たとえば「長者番付」なども、載っている人はいいとして、「なぜあの人が載っていないのか?」の方にこそ、興味と価値があるわけです。

僕は、マーケティングに携わる仕事をしています。
以前は、生活者調査とその分析からマーケティングの解を見出すことに大きな価値がありました。
でもツイッターなどのSNSが普及して、クライアント企業を含めた誰もがその気になれば、生活者の一次情報を手に入れられる環境になっています。
ならば、調査と分析だけで価値を提供するのは難しいわけです。

この環境で、マーケティングのプランナーが価値を提供できるとすれば、それは「視点の提供」です。
そのひとつがホームズのような「本来あるべきものがない」という発見なわけです。

クライアント側は、長年その分野で活躍してきたプロです。
そこに対して、これまでのような調査や分析だけで価値を提供するのは、もはや難しいでしょう。

しかしもしかすると、相手にとっては長年「ないことが当たり前」だと思っていることがあるかもしれません。
そんな場合、新しい視点として「本来あるべきはずのことがありませんよ」と示せれば、相手はとても驚きます。
それを埋めるアイデアを出せれば、説得力のある企画になるでしょう。

大げさに言えば、「人に見えていないものを見い出す力」ということでしょうか。
これが、プランニングの一歩だと思います。
そんな、自分にとってのホームズのルーペが欲しいですね。

今日はこのへんで(^^