作成者別アーカイブ: 京井良彦

ザハ氏のプレゼンに学ぶ「費用」を「投資」に捉えなおす方法

世の話題はすぐに劣化してしまいますので、すでに昔のことのようですが、新国立競技場の建設計画は、2520億円という大きな費用が問題とされ白紙撤回となりました。
で、こちらも時間が経ちましたが、それに対してデザインを担当した建築家のザハ・ハディド氏が、動画プレゼンを公開して話題になりましたね。

白紙撤回については意見をいう立場にないのですが、このザハ氏のプレゼン動画は問題の捉え方とプレゼン手法の事例として学ぶところが大きいですね。
純粋にこのプレゼンについて考えてみましょう。

ザハ氏はこの動画プレゼンで、デザインの必然性や工期、費用について説明し、「建設費を減らすためだけにゼロからデザインをやり直すことはリスクを増やすだけだ」と述べています。
詳しくは下記の動画を見ていただければと思いますが、説得力があるという声がネット上でも多数上がっていますね。

ザハ国立競技場
※これはサイト画像です。動画は以下リンクから。
ZHA ビデオプレゼンテーションとレポート―新国立競技場 東京 日本

このプレゼンの説得力はどこにあるのでしょう?
それは、ザハ氏がこの建設を「費用」ではなく「投資」と捉えて企画を組み立てているところです。

プレゼンには「ビヨンド」や「レガシー」といったキーワードが出てきます。
これは「このプランは2020年以降を見据えてのものです」ということ。
お金が掛かるデザインの一つ一つには、2020年のオリンピック・パラリンピック開催後に初期建設費を回収し、その後の運営費を生み出していくための理由があるわけです。

何事も「予算を使う」という発想だと、掛かるお金を「費用」としか捉えられず、できるだけ抑えよう減らそうという考えになってしまいます。
でも、このように「これから継続運営していくビジネス」と捉えると、「投資」という発想が必要で、初期投資の金額ではなく、どうやって回収していくかという「プラン」の方が重要になるわけですね。

これって、広告会社がクライアントにプロモーションの提案プレゼンをする際にも考えなければならないことです。
プロモーションや広告を「単発の費用」と捉えてしまうと、施策や表現の良し悪しについて、「トンマナ」や「世の中の空気」とか「今、イケてる」とかで説得しようとしてしまいます。

でもこれを、「クライアントにとっての投資」と捉えると、その施策や表現が「どのように人を動かすか」、「その結果どれだけ商品やサービスの売りに貢献できるか」、「他の投資に比べてどれだけ効率的な回収が見込まれるか」で良し悪しを説明することになります。

どうでしょう?こういう説明だと、説得力がありますよね。
実際、僕もこういうプレゼンをするようになってから、企画が通る確率が上がりました。

そしてこれは、あらゆる企業活動、社会活動に言えることだと思います。
これまで「費用」だと思っていたものを「投資」と捉えなおすと、これまで行き詰っていた問題に新しい解決策が見えてくるかもしれませんね。

では今日は、このへんで(^^

現地速報:カンヌライオンズ2015 その4

カンヌヨットハーバー

7日間に渡って開催されたカンヌライオンズも昨晩でフィナーレを迎え、終幕の運びとなりました。
中盤の中だるみから一転、クライマックスである最終日の授賞式はものすごい混雑。
メイン会場に入りきれない人たちを隣のドビュッシーホールでの中継視聴に誘導するも、そのドビュッシーからも人が溢れるという状況でした。

さて、昨晩はブランデッドコンテンツ&エンタテインメント、フィルムクラフト、チタニウム&インテグレイテッド、フィルムの4部門の発表でした。

ブランデッドコンテンツ&エンタテインメントは、「アイスバケツ・チャレンジ」他、ゴールドは多くの受賞がありましたが、グランプリは該当なしと発表されました。
ゴールド受賞の中で僕がもっとも惹かれたのは、WATER FOR AFRICAという団体の「THE MARATHON WALKER」という施策。
これは、グラス部門などでもゴールドを受賞していました。
毎日飲料水を汲むため、フルマラソンと同じ距離を歩かなければならないアフリカのある村の女性が、井戸を掘る募金を募るため頭に水のタンクを乗せてパリマラソンを歩いたというもの。
こういう身を挺して世に訴える系に、僕、弱いんですよね。
エントリーされていた映像がすごく泣かせるのですが、見当たらないのでこのニュース映像を紹介します。

次はフィルムクラフト。
グランプリは、イギリスの百貨店ジョンルイスのクリスマスCM「MONTY’S CHIRISTMAS」。
クリスマスを前にした少年とペンギンの物語です。
審査委員長が「もっとも審査員みんなの心の奥にまで届いたもの」と言っていましたが、ホントこれ、やばいです。
ジョンレノンの「Real Love」のカバーせいもあって、僕は見るたびに泣いてしまいます。

次はチタニウム&インテグレイテッドですが、まずはインテグレイテッドのグランプリとして、NIKEが実施した「RE2PECT(リスペクト)」が受賞しました。
これはNYヤンキースのデレクジーター選手の引退に敬意を示した施策で、RESPECTのSが「2」になっているのはジーター選手の永久欠番になった背番号を表しているものです。
様々な有名人が帽子に手を触れるジェスチャーで、ジーター選手の功績に敬意を送るものです。

そしてチタニウム部門。
これは、最も先鋭的でクリエイティブの未来の可能性を評価する賞なので、僕は一番楽しみにしていました。
で、グランプリは、米国ドミノピザの「Emoji(絵文字)Ordering」という、ツイッターでピザの絵文字をツイートして注文できる施策・・・。
この発表を聞いた時、正直「???」となりました。僕の理解不足でしょうけど。

もしかすると、人間は思考のわずか5%しか言語化できていないという説があるように、残りの95%の非言語領域のコミュニケーションに切り込んだことが評価されたのかもしれません。
僕も、もうちょっと理解を深めます。
でも、ドミノはいつも面白いことにチャレンジしますよね。

そしてフィルム部門。グランプリは2つ出ました。
ひとつは、ライカカメラの「100」というフィルム。
ライカ100周年とブラジルでのギャラリーオープンを記念して、歴史に残る100枚の写真を動画で再現したものです。
ここでも、ジョンレノンが登場してますね。

そしてもうひとつ。前評判の高かった米国自動車保険GEICOの「UNSKIPPABLE (アンスキッパブル)」が、ついにグランプリ受賞です。
これはYouTube動画の前に流れる広告としてスキップされてもいいように、60秒のうち最初の15秒で全部言い終えてしまうというフィルム。
そして言い終えた後が面白い。ついつい最後まで見てしまいます。
シリーズ展開していますので、興味があれば検索してみてください。

さて、これで速報としてのカンヌレポートは終わりです。
前半のアクティベーション系の施策とがらりと変わって、後半は映像でのストーリー展開するコンテンツに魅了されました。

ここから得られた示唆や総括は、またどこかでやれたらと思っています。
毎日のお付き合いありがとうございました。
そろそろ、日本に帰りますね。
今日は、このへんで(^^

現地速報:カンヌライオンズ2015 その3

8日間に渡るカンヌライオンズでは、そろそろ中だるみ感が出てくる時期ですね。
いつも人でごった返しているセミナー会場やアワードでも、比較的席に余裕がある感じがします。
一方で、周囲のレストランなどは昼間から酒盛りが始まっていたりとか。
こういうのは、世界共通なんでしょうかねえ。

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さて、昨晩は、ラジオ、デザイン、プロダクトデザイン、サイバーの4つの部門の授賞式でした。
まずは、ラジオ部門。
グランプリは、SoundCloudというドイツの音声ファイル共有サービスが実施した「The Most Unbearable Radio Ad」というものでした。
これはベルリンの壁崩壊25周年を記念に、当時のさまざまな音源をミックス。そのデジタル上の波形が、ベルリンの壁を表現するデザインになっているというもの。
わざとでしょうがその音は、銃声とか悲鳴とかがミックスされて、すごくオドロオドロしい感じに仕上がっています。

ラジオ部門は、ラジオCMという表現で考えると、日本からいちばん疎い部門かもしれません。
しかし今回のように、ラジオメディアの新しい体験をつくるというふうに考えていくと、もっと日本でもやれることがあるかもしれませんね。
3年前にブラジルのGo outsideという雑誌が、蚊をよける超音波ラジオCMでグランプリを獲ったことがありましたが、あれをちょっと思い出しました。

次はデザイン部門。
グランプリはボルボUKの「Life Paint」。
プロモ&アクティベーションに続いて2冠目です。本当にボルボ強い。
自転車事故を防ぐためヘッドライトに反射するスプレーですが、前回紹介したので、省略しますね。
ちなみに、デザインは日本勢がもっとも活躍する部門で、ゴールドではJR東日本の「行くぜ、東北」など3つの受賞がありました。

次はプロダクトデザイン部門。
グランプリは、カンボジアで実施された「The Lucky Iron Fish Project」です。
カンボジアでは国民の半分が、鉄分不足に悩まされているらしいです。
知らなかったのですが、認知症とか成長障害へと影響するらしい。
そこで現地で幸運の象徴である魚の形をした鉄のかたまりを販売し、調理鍋に入れて料理する習慣を普及させたというものです。
しかし、世の中には僕らの知らない課題が満載なんですねえ。

そしてサイバー部門。
グランプリは、米国のスポーツブランド、アンダーアーマーの「I Will What I Want」です。
ブラジル人モデルがこのCMに起用されたとき、SNSが誹謗中傷で炎上。
これを逆手にとって、そのメッセージをスタジオに投影して、彼女がキックやパンチ、竹刀を振り回したりしてやっつけていくという企画を実施、これがまた話題を呼ぶというループを実現しました。
「I Will What I Want」のコピーとうまくマッチして、より強いブランドメッセージになっていますね。

まだ中盤ですが、ちょっと潮流が見えてきましたね。
これまでのソーシャルグッドはもっと日常的なハピネスの追求をしていましたが、今回は世界のさまざまなところにある、人間の生き死にだったり、女性の偏見払拭だったり、ものすごく生々しい課題の取り上げに傾向してきたように思います。

意地悪くいえば、世界中に眠っている僕らの知らないような課題をいかに見つけてくるかに、みな躍起になっているようにもみえます。
課題発見の大航海時代ですかね。

今日はこのへんで(^^

現地速報:カンヌライオンズ2015 その2

カンヌでは、各エージェンシーごとにだいたい集うお店が決まっています。
昨晩は博報堂さんが集うお店で、みなさんと語り合いました。
言い訳になりますが、毎晩の授賞式の後はその意義を語り合うという名目のもと、深ーい酒盛りがあり、完全な速報になりません・・・お詫び申し上げます。

さて、昨晩の授賞式は、アウトドア、クリエイティブ・エフェクティブネス、 PR、新設のグラス(男女差別や偏見問題)、メディアの5部門でした。

まずはアウトドア部門。グランプリは、米国アップルの「World Gallery」、東京でもよく見かけた「iPhone6で撮影しました」というやつです。
一般ユーザーがSNSに投稿したものをあちこちのアウトドア媒体に掲載するものですが、これだけ世界展開しているというのは僕も知りませんでした。
シンプルなアイデアですが、その規模を考えると評価は納得です。

次は、クリエイティブ・エフェクティブネス部門。
この賞はちょっと地味ですが、昨年の受賞作からその効果を評価するもの。
グランプリは、ボルボトラック(スウェーデン)の「Live Test Series」、あのジャン=クロード・ヴァンダムが足開くので有名なシリーズですね。
しかし、結果論かもですが、ボルボのグランプリが続いてますね。
最近、自動車メーカーの中ではブランド力が際立っているように感じます。

次はPR部門。グランプリはついにでました、P&Gの生理用品Alwaysの施策「#LikeAGirl」です。
これ、事前の期待がすごく高かったので、グランプリ発表のときには拍手喝采でした。
女性自身が初潮を境に、女性というものに偏見をもってしまう様を浮き彫りにしたもの。
女性にとって、もとは活発な女の子だったことを思い出し、勇気づけられるものでしょう。

2年前のFBI捜査官の似顔絵施策「Real Beauty Sketches」の手法に近いですよね。
あれも、女性を勇気づけるものでした。

そして新設のグラス部門。
これは男女差別や偏見にどこまでクリエイティブが立ち向かえるかのチャレンジですね。
発表前、審査委員長のシンディ・ギャロップさんが部門創設の意義に熱弁を振るっていました。

事前には「#LikeAGirl」のグランプリが予想されていましたが、受賞したのは、P&Gインドのこれまた生理用品、Whisperの施策「Touch the pickle」でした。
インドにいまだに残る「生理中の女性がピクルスの漬け物壷にさわるとピクルスが腐る」というとんでもない迷信を払拭するためのスローガンです。

グラス部門はこの他、「#LikeAGirl」を含めた8つほどの施策(正確な数忘れました・・)にグラスライオンが与えられました。
しかし、確かに課題は重要なものを扱っているのですが、どうもそのアイデアに切れ味がないような、既視感があるような。。。
まあ、新設時は課題を課題として取り上げることに意味があるということで、こんなものなのでしょうか?

そしてメディア部門のグランプリは、Vodafoneトルコが実施した「Red Light Application」。
DV被害の女性が、危険を感じたときに友人に緊急連絡を発信できるアプリです。
なぜメディアグランプリかというと、このアプリの存在を男性に知られないように、女性だけが見るメディアを選りすぐって告知していったからです。
たとえば、女性トイレや、女性用下着や脱毛テープなどなど。

この部門の審査員をされた博報堂の安藤さんに話を聞くと、これはResultに絶大な評価があったとのことでした。
つまり、そういったメディアを選択した結果、実際にアプリのダウンロードで成果を出したから、と。
しかし、これだけ徹底的に王道メディアを避けた施策がグランプリって、考えさせられますねえ。

こちらはオマケ。
メディア部門のゴールドだったアイスバケツ・チャレンジの受賞で、きっかけを作ったご本人家族が登場。
会場は、スタンディングオベーションとなりました。

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カンヌはまだまだ続きます。
今日はこのへんで(^^

現地速報:カンヌライオンズ2015 その1

今年もカンヌ国際クリエイティビティ・フェスティバルに来ています。
昨年参加できなかったので、2年ぶりですね。

それにしても、南仏のコードダジュール沿いは、本当にすばらしい気候です。
目も開けられないくらいの眩しい陽とカラッとした空気。
その恩恵で食材に恵まれて、ワインやシーフードもびっくりするくらい美味しい。
いや、ここで広告祭をやろうと最初に目をつけた人に感謝するしかないですね。

カンヌ2015

さて、業界の潮流については、電通報という社のサイトにレポートしているので、こちらでは受賞の速報をしていこうかと思います。
昨晩はプロモ&アクティベーション、プレス(プリント広告)、ダイレクト、モバイルの4部門の発表がありました。

プロモ&アクティベーション部門のグランプリは、ボルボUKの「Life Paint」という施策。
ボルボは自動車と自転車の接触事故を防ごうと、ヘッドライトに反射して光るスプレー塗料を開発。
自転車に乗る人に使ってもらって、事故を減らす活動をしたというも。
自動車を売っていくための社会責任は、ここまで来てるんだなあと考えさせられますね。

プレス部門のグランプリは、ブエノスアイレス市の24時間自転車レンタルサービスの広告「Never Stop Riding」。
前輪と後輪の関係で、ずっと走り続けるということを表現したものですが、うーん、そんなに面白いかなあ。。。すみません。

never stop riding cannes

ダイレクト部門のグランプリは、米国ボルボの「Interception=アメフトで相手からボールを奪うこと」でした。
これは、アメリカのスーパーボウルの時に実施されたヒット施策ですね。
他の自動車メーカーのCMオンエア中に、ボルボ車をプレゼントしたい人の名前をツイートすると抽選で新車が当たるというもの。
以前、ペプシコーラがスーパーボウルのスポンサーを降りて、その予算でボランティア支援を始めた事例がありました。
今回のボルボもスポンサーを降りたあとの施策ですが、もっと直接的にその予算を使ったわけですね。まさにダイレクト。

モバイル部門のグランプリは、米国グーグルの「Card board」という施策。
段ボールのゴーグルにスマホを入れると簡単にヴァーチャル体験が楽しめるようになるキットを、サイトで配布しているものです。
テクノロジーサービスをこういうアナログなものと組み合わせるところが面白いということでしょうか。
うーん、これもなんか微妙ですね。

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ちなみにこの日、会場を一番湧かせたのは、ダイレクトのゴールドを受賞した、MARC DORCELというアダルトビデオサービスの「#HANDSOFF(ハンズオフ)」という施策。
ネットでアダルトビデオの視聴が無料でできるが、その条件として両手をキーボードの上に置いておく(ハンズオン)必要があるというものです。
手を離すと映像が消えてしまいますが、#HANDSOFFの入力でこの条件が解除されるとともに課金されるというもの。
ホント、よく考えますよねえ。

という感じで、今のところの傾向としては、ものすごく斬新なアイデアで切り込むというより、小さなアイデアを丁寧にやりきるというものが多いように思います。
まだまだ続きますが、今日は、このへんで(^^

リーダーシップは、判断力でなく決断力

リーダーシップって、ちょっと気後れする言葉ですよね。
「いやいや、自分はまだまだそんな立場ではなく・・」みたいな。

でも実は、リーダーシップって、立場の話ではありません。
伊賀泰代さんの著書「採用基準」にもいい例があります。

たとえば、打ち合わせの場で、机に広げられていたちょっとしたお菓子や飲み物。誰かが処分しなければなりません。
そこで「自分が声をあげる問題ではない」と考える人がいるなかで、「このお菓子、置いていてもしょうがないので、どなたかもって帰れる人いますか?」と声をあげる人がいます。
そう、この人が、リーダーシップのある人です。

前者はなんらかの問題に気がついた時、「それを解決するのは誰の役割か、誰が責任者か」と考える人。
後者はそれを解くのが誰の役割であれ、「こうやったら解決できるのでは?」と自分の案を口に出してみる人。
後者が、リーダーシップのある人です。

こんなふうに、リーダーシップとは、それ自体そんなたいそうなことではありません。
発揮する場面は日常的に存在するものです。

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中谷彰広さんの講演映像をみていたら、リーダーシップについて、これまた面白い説明がされていました。
「マネージャーとリーダーは違う。判断するのがマネージャー、決断するのがリーダー」というものです。
やや言葉遊び的なところがあるので、ちょっと誤解が生じるかもしれませんが、補足としてこんな説明がされています。

ある問題解決について、意見が6:4にわれたとき、6をとるのがマネージャー。
意見が8:2にわれたとき、それでも2をとれるのがリーダー。

NHKのドラマ「坂の上の雲」で、印象的なシーンがあります。
日本海海戦で、ロシアのバルチック艦隊より攻め入られるというとき、司令長官の東郷平八郎は、大方の読みとは違う、参謀秋山真之の「バルチック艦隊は対馬から来る」という読みにかける決断をします。

途中、真之の「いや、やはり津軽から来るかも」という迷いもはねのけます。
「せめて、自国軍を半々に配備しては」という提案もはねのけます。
敵は大艦隊。半々ではどのみち勝てないのです。

結局、いわば8:2の意見の2をとって、対馬から来たバルチック艦隊に勝利。
これがリーダーの決断というわけです。

お菓子と海戦は極端な例ですが、問題の大小にかかわらず、リーダーシップを発揮する機会があるということ。
そして、お菓子のような日常的な場面でリーダーシップを発揮しない人に、海戦のような大きなプロジェクトでリーダーシップを発揮することは期待できないだろうということです。

なので、その人にリーダーシップがあるかどうかは特に大きな仕事をしなくとも、一日一緒に仕事をすればすぐにわかります。

僕の今の仕事は、巨大なシステムをトップ一人が動かすものではありません。
スモールチーム内の全員がそれぞれ意思決定をして進めていくものです。
つまり、全員にリーダーシップが求められます。

そんなリーダーシップを身につけるためには何が必要か?
いや、何か特別なトレーニングが必要だとは思いません。

「誰かが決めてくれるのを待つのではなく、自分たちで話しながら決めていく」
その意識を持つことで、大きく変わるのだと思います。

今日はこのへんで(^^

「選択」とは極めて禁欲的な行為だ

いつも、仕事でもプライベートでも、やりたいことやチャレンジしたいことがたくさんあって悩みます。
たぶん、みなさんもそうでしょう。
でも、すべてのことを漏れなくやるというのは、いくら時間があっても無理ですよね。

限られた時間の中で、何をやって、何をやらないかを決めていかなければなりません。
すごく大げさにいうと、自分の意思でやるべきことを選択し、人生を設計していくということ。

選択というのは、何をやるかを選び出すことですが、逆からいうと、他のすべての選択肢を捨てるということになります。
人生で自分が本当に獲得したいことをより抜き、そこに集中するために他のすべてを削り落とすということです。

ジョン・キムさんの著書「断言しよう人生は変えられるのだ。」に、すごくいい言葉があります。
「選択とは、ゼロから何かを創り出していくような創造的な行為ではなく、捨てたり、やめたり、断ったり、削ったりという極めて禁欲的な行為である」

ミケランジェロが彫刻のダビデ像を完成させたとき、こんなことを言ったそうです。
「自分はダビデを創ったのではない。ダビデは石の中にすでに眠っていて、自分は不要な部分を削り落としただけだ」

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きっと僕たち一人ひとりの人生にもダビデ像は眠っていて、日々の選択とは、その本質以外の不要な部分を削っていくことなのでしょう。
勇気を持って、ひとつひとつの選択を決断していかないと、自分自信のダビデ像は日の目をみないまま眠り続けていくことになりますよね。

本書には、だから「常に自分の人生の中で大切なことは何かを問い続け、それを先送りしない人生を生きよう」と、ありました。

うんうんと、ものすごく同感しつつも、「それが難しいからいつも悩んでるんじゃん」という気持ちもあり・・・。
今日はこのへんで(^^

「あることがない」を見つけるシャーロック・ホームズの視点

久しぶりに時間ができて、シャーロック・ホームズなんかを読み直したりしていました。
僕はビジネス書ばかり読んでるように思われがちですが、文学も結構読みます。
特に推理小説の古典は、クリエイティブな視点を養うのに、すごく有益だと思うんですよね。

シャーロック・ホームズの視点は、野口悠紀雄さんのエッセイ「超整理日誌」にも取り上げられていますし、僕の著作「学校でも会社でも教えてくれない企画プレゼン超入門」でも紹介しています。

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有名なのは、「白銀号事件」ですね。
イギリスの競馬界が舞台で、「白銀号」という競走馬にまつわる話です。

白銀号の調教師がレースの直前に謎の死を遂げます。
事件を依頼されたホームズは、トレードマークのルーペを片手に現場検証を始めます。
そして、関係者が見向きもしないような情報を丁寧に集めながら、ひとつの事実に光を当てるのです。
それは「番犬が吠えなかった」ということ。

ここでホームズとグレゴリー警部のやりとりがあります。
「あの晩の、犬の不思議な行動が解りますか?」
「えっ、犬は全然何もしなかったはずですが」
「そこが不思議な行動なんですよ」

ホームズが注目したのは、番犬が何もしなかったということです。
もし侵入者があれば、犬は吠えたはず。
それがなかったということ。
ホームズはこれを掘り下げていき、身内の犯行であることを突き止めます。

ホームズの視点から学べることは、「あるはずのものがないこと」を見つける力です。
普通、「ないはずのものがある」場合は、大抵の人は気づきますよね。
安定推移のグラフがいきなり変化するとおかしいと気づきますし、官邸にドローンが落ちていてもおかしいと気づきます。

しかし、「本来あるべきものがない」ということを見つけるのはなかなか難しいものです。
そして「あるべきものがない」という情報の方が、価値があることが多い。
たとえば「長者番付」なども、載っている人はいいとして、「なぜあの人が載っていないのか?」の方にこそ、興味と価値があるわけです。

僕は、マーケティングに携わる仕事をしています。
以前は、生活者調査とその分析からマーケティングの解を見出すことに大きな価値がありました。
でもツイッターなどのSNSが普及して、クライアント企業を含めた誰もがその気になれば、生活者の一次情報を手に入れられる環境になっています。
ならば、調査と分析だけで価値を提供するのは難しいわけです。

この環境で、マーケティングのプランナーが価値を提供できるとすれば、それは「視点の提供」です。
そのひとつがホームズのような「本来あるべきものがない」という発見なわけです。

クライアント側は、長年その分野で活躍してきたプロです。
そこに対して、これまでのような調査や分析だけで価値を提供するのは、もはや難しいでしょう。

しかしもしかすると、相手にとっては長年「ないことが当たり前」だと思っていることがあるかもしれません。
そんな場合、新しい視点として「本来あるべきはずのことがありませんよ」と示せれば、相手はとても驚きます。
それを埋めるアイデアを出せれば、説得力のある企画になるでしょう。

大げさに言えば、「人に見えていないものを見い出す力」ということでしょうか。
これが、プランニングの一歩だと思います。
そんな、自分にとってのホームズのルーペが欲しいですね。

今日はこのへんで(^^

プラットフォーム戦略。合コンで得をするのは誰か?

僕はよく企画で「プラットフォーム戦略」という言葉を使うのですが、たまにどうも話が噛み合ないということがあります。
たぶん、プラットフォームという言葉の解釈が違うんでしょう。

プラットフォーム戦略は、シンプルですが、すごくパワフルなものです。
ずいぶん前の本ですが、「プラットフォーム戦略/平野敦士・アンドレイハギウ著」では、合コンを例に説明していて、とても分かりやすいです。

合コンは、ビジネスでいうと「婚活パーティ」や「お見合いクラブ」というものになるのでしょう。
このビジネスモデルはシンプルにいうと、例えば男性1万円の参加費、女性は無料として、男女グループをマッチングさせる「場」を提供するというもの。

幹事である自分は特に魅力的なサービスがなくても、魅力的なメンバーを集めることで、その場を魅力的なものにするというものです。

さて、この戦略で噛み合なくなるのはここなのですが、この場をどういうしつらえにするのがよいかという問題です。
1万円という参加費を支払う男性をもてなすのか、無料で参加する女性をもてなすのかということ。

通常のビジネス発想だと、お金を払ってくれる男性がお得意様であり、もてなす対象です。
合コンの場は、料理もインテリアもBGMも、みんな男性向きにするべきだと考えるでしょう。

でも、プラットフォーム戦略では違います。
無料で参加する女性の嗜好を優先するのです。
料理もインテリアもBGMもみんな女性向きということ。

なぜでしょう?
男性趣味の場は、はじめは男性は集まりますが、そのうち肝心な女性が集まらなくなってきます。
これではビジネスは破綻しますね。

一方、女性趣味の場は、たえず女性が参加しつづけてくれます。
なので、それを目当てとした男性もたえず集まりビジネスは継続していくということになります。
実際に、前者の会社は破綻し、後者はうまくいっているという話を聞きました。

つまり、プラットフォーム戦略では、場を維持するためのエコシステムを構築することが大事なのです。
この原理さえ理解していれば、合コンというビジネスで、幹事が一番得することが可能になるわけです。

スライド1

僕の話に戻すと、場のしつらえを男性向きにしようとする人たちに、「いや、女性向きにしないとダメです」と説得することが多いということ。

話を大きくすると、グーグルだって、フェイスブックだって、アマゾンだって、アップルのiTunesだって、みんな無料でつかっているユーザーの方を向いています。
さきほどの本には「モノづくり大国だった日本が凋落した原因のひとつはこのプラットフォーム戦略の欠如だ」と書かれていました。
プラットフォームの原理を理解することも大事だし、もはやモノ単体の価値ではなくプラットフォームの一部としてどういう価値があるかが重要だと理解することも必要なわけです。

広告会社も、かつてはクライアント企業とメディアをつなげる、いわばプラットフォーム的な役割を果たしていました。
この場合(誤解を恐れずにいうと)、メディアを好待遇することで枠を確保し、クライアント企業から出稿をいただいていたわけです。

でも、インターネットの登場以降、時代は変わって、広告会社はクライアント企業と生活者をダイレクトにつなげることが可能になりました。
プラットフォーム戦略を考えるならば、広告会社は、企業と生活者のマッチングの場を提供する必要があります。
その場合、生活者に向けたしつらえをどれだけできるかということになっていくわけです。

生活者とダイレクトにつながって、オーディエンスデータを保有して、それをネタに企業やメディアを誘致する。
生活者に直接コンテンツが届けられるのなら、クライアント企業やメディアですらもこのプラットフォームを活用すると思うのです。

広告会社は合コンの幹事だ。
と、僕、もうずっと昔からこの話をしているのですが、業界周辺で目立った動きがないような・・・。
僕が知らないだけで、どこかでちゃんと進んでいることを願うばかりです。
今日はこのへんでー(^^

※詳しくはこちらをお薦めしますー

正しいほど相手を傷つける。「正論」が通じない理由

ここ最近、人から相談を受けることが多くなりました。
仕事の相談はもちろん、ややプライベートなことまで。

僕もそういう立場になってきたんだなあと、なんだかうれしく思いながらも、ちょっと責任を感じたりとか。
いや、僕自信も、人に相談したいことが山ほどあるんですけどね。
どなたか聞いてくれませんか?(笑

相談

さて、そんなふうに人に相談されるときに気をつけていることがあります。
それは、「正論を言わない」ということ。

人に悩み事を相談されてよくやるのが、正論探しです。
僕も昔は「せっかく相談されたんだから、正しいことをアドバイスしなきゃ」と一生懸命に考えて答えてきました。

でも、以外と正論というのは通じないんですね。
相手はそんなこと聞きたくないんです。

これは山田ズーニーさんが言っていたことですが、正論が通じない理由として、「正論を言う時、自分の目線が相手より高くなっている」ということがあります。
正論って、エラそうなんですよね。
正しければ良いわけではないんです。

相談してくれた相手は、正しければ正しいほど傷つき、否定できず、すぐに自分を変えることもできません。
「わかっているけど、変えられない」
これほど、苦しめられることはありません。
相手は、僕のことを「自分を傷つける人間だ」と思ってしまうのです。

なので、正論を言うのではなく、まずは同じ目線で相手を理解することが大事です。
褒めたり励ましたりするのではなく、相手の現状を理解し、共感し、正直に思うところを示すということです。

もし同じ立場だったとき、どうするか?どう変われるか?を自分の経験に基づいて話すわけです。
「ふーん、それはなんで?」「いつからそうなの?」「なるほどねえ、僕だったらこうするかなあ」。
それはもちろん、自分の身の丈を超えることなく、等身大の言葉として。

そこに「答え」はありません。
どちらかというと、「答え」を与えようとするのではなく、「問い」を共有する。
「問い」は、人に自ら考える力を与えます。
問いを共有すれば、相手は自ら考え、行動する勇気を得るのです。

人間は、結構強いです。
でも、その強さを引き出してあげる必要があります。
それは、決して強くなるために正解を与えることではありません。
どうやったら強くなれるか?
ひとつできることとして、僕も一緒になって悩んであげることかなあと思うわけです。

これは、企業コミュニケーションも一緒です。
「こうするべき、ああするべき、うちの商品はそれをかなえてあげます、任せて下さい」
そんなふうに言われれば言われるほど、距離をとってしまうのが人間です。

そうではなく、生活者の気持ちや悩みを共有することが先です。

もっと人間の気持ちを理解し、尊重しましょう。
僕が担当するプランニングは、こういう思想に基づいています。
なので、自社の商品やサービスを強引に売り込みたいという考えには合わないかもしれません。

もっと深く、強く、人とつながるためにできることって何だろう?
そんなことばっかり考えています。
それは、個人として相談される僕も、仕事人としての僕も、同じスタンスです。

結局、コミュニケーションって、「人間理解」ってことだと思うのです。
今日はこのへんで(^^