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広告は「メッセージ配信」から「体験提供」へ

前回のエントリー「壊れたモデルの延長上に未来はない」にたくさんの反響を頂きました。
そこでは、従来型のマスメディア中心の広告の延長上では、コミュニケーションが成立しなくなってきた話をしました。
今日は、その続きを少ししたいと思います。

中でも従来とまったく違ってくるのは、「ユーザーインサイト(生活者洞察)」の捉え方でしょう。
これも村上知紀さんの著書「デジタル・クリエイティビティ」に近い考え方が紹介されています。

メディアをベースにした広告だと「クリエイティブ表現」による「メッセージ」を、メディアに載せて配信することが施策の中心になります。
なので、「どんなメッセージだとユーザーの気持ちが変わるのか?」という「心理的なインサイト」を捉えることが大事になります。
「こんな表現やこんなメッセージを届けることで、ユーザーのこれまでの気持ちをこう変える」というものが広告の施策になっていくわけです。

しかし、インターネットやソーシャルメディアが浸透し、テクノロジーの進化でコミュニケーションがインタラクティブになると、広告にはもっとできることが増えていきます。

そんな中で重要なのは、心理的なインサイト以上に「行動のインサイト」になります。
ユーザーがもともと持っている「あんなことしたい」「こんなことしたい」という「モチベーション(行動の動機)」を洗い出すのです。
そして、その実現をサポートしていくということが広告施策の中心になっていきます。

たとえば、ドラマ「半沢直樹」を見ている視聴者は、なにをしたいと思っているのか?
サッカーの代表戦を観戦しているファンたちは、どう行動したいと思っているのか?

その思いに応え、ユーザーの行動できる場を用意して体験を提供していくということです。
半沢直樹を見て、普段のフラストレーションを語り合いたいのであれば、そういう場を用意する。
サッカーの代表戦で選手たちに応援メッセージを届けたいのであれば、それをサポートする。

そんな思いに応えてくれた施策、そこでのユーザー体験が、そのままブランド・ラブを生み、ブランド価値を築いていくわけです。

従来型のメディア中心の広告では、コミュニケーションが成立しなくなってきたと述べました。
しかし、広告のアウトプットは、「表現」だけでなくなっています。
ならば、従来の延長ではない発想でコミュニケーションが成立させることを考えなければなりません。

そのひとつが、広告を「メッセージ配信」から「体験の提供」へと変えていくということなわけですね。
今日はこのへんで(^^

僕たちは、ちゃんとお金を使っている

ハフィントン・ポストが、境治さんのブログを転載していました。
『お金を「多く使う」より「善く使いたい」。それが21世紀なんだろうね』

そこで取り上げられていた野村総研の調査レポート。
先月末に発表されたものですが、これ僕もマークしていました。
『リアル「日本人消費者」は、15年でこんなに変わった』

このレポートによると、「2001年から2010年の間、人々の支出金額は2%しか減っていない」とあります。
「クルマや大型家電は売れなし、新築住宅の着工戸数は減少しているが、人づき合いや体験、思い出などへの投資額は若い人中心に増えている」とあります。

つまり、よく言われる「モノ消費からコト消費へ」というパラダイムシフトが、ちゃんとデータで証明されたわけです。

こうなると、「デフレで失われた20年」というのも、ウソだという言い方もできます。
そうではなく、お金の使われ方が変わっていて、それを読めていない商品、サービス、つまり旧来型の産業にお金が流れなくなっているだけなわけです。

さらに、モノを買わない理由として、「モノを消費することへの罪悪感・抵抗感がある。不要なモノを所有することへの罪悪感・抵抗感が増している」とあります。
つまり、過剰にモノを買うこと、モノを所有することがカッコイイことではなくなっているわけですね。

これは拙著「ロングエンゲージメント」でも述べたことですが、高級車を所有し、いい家に住んで、オシャレな服やカバンを身につけ、みたいなことがカッコイイとされてきた世界は、結構な部分、過去の広告によって築かれた幻想のようなものじゃないかと思うのです。

広告が時代を作るのか、時代を広告が追いかけるのかという議論は昔からありますが、「所有することじゃなく、体験にお金をかけることがカッコイイ」時代には、広告もそうなってなきゃなりません。
そして、広告で言ってるだけじゃなく、そもそも広告の中身である商品やサービスもそうなってないとダメなわけです。

とにかく、景気は悪くない。僕たちはみんな、ちゃんとお金を使っています。
そのお金の行き先に、これまでの産業が追いついていないだけと言えるかもですね。
もちろん、広告業界も含めて。

※まったく関係のないお知らせですが、今月から「プランニング・ディレクター」を名乗っております。

ベソスはワシントン・ポストの「ブランド」を買った

少し出遅れましたが、アマゾン・ドットコムのCEO、ジェフ・ベソス氏がワシントン・ポスト紙を買収したというニュースが業界を賑わせました。

「アマゾン創業者ジェフ・ベゾス氏、アメリカ有力紙ワシントン・ポストを2億5000万ドルで買収」ハフィントンポスト
Amazon Holds News Conference

で、あちこちで、「なんでワシントン・ポストを?」「なんで、アマゾンじゃなくてベソス個人?」みたいな議論が交わされていますね。
いろいろ目を通してあんまり難しく考えずに、僕なりに整理しておきたいと思います。

まず、アマゾンビジネスとしてのキンドル活性化が大前提になっています。
アマゾンは、書籍やCD、DVDの売上が70%、家電など、エレクトロニクスといわれる部門が30%のネット小売りビジネスでしたが、自前のデバイスとしてキンドルを開発したがゆえに、そのコンテンツを揃えなければならないという使命を負うことになりました。
書籍の電子化が当たり前になる中で、キンドル活性化の次のイノベーションとして、「コンテンツ生成機能」を直に手に入れようと考えたということです。

で、それがなぜ「ワシントン・ポスト紙」なのか?
いろいろ言っている人がいますが、簡単に言うと「そのブランドを買った」ということでしょう。
ワシントン・ポストで一番有名なのは、「ウォーターゲート事件」です。
これは70年代に、ニクソン大統領が再選のために違法に裏金をまわしていたことをスッパ抜いたというもの。
お上からの圧力に屈せず、現場の精神を支えて報道したとして、今でも語り継がれるもので、この一件でワシントン・ポストは、ジャーナリズムの象徴となりました。

ジャーナリズムで大切なことは、その事実性は大前提として、「誰が言うか」です。
たとえば、「ヒマラヤで雪男を発見」というニュースがあるとします。
これをNHKが番組で報道するのと、東スポの一面に出ているのとでは、その受け止め方が変わってきますよね。
メッセージの内容は同じなのに、誰が言っているかで意味が変わってくる。
この「誰が=ブランド」という信頼を築くのは、一夜ではできません。
しかしベソス氏は、このブランドを、巨額の資金で一夜にして手に入れたというわけです。

一方、ワシントン・ポスト側は、他の新聞社と同じく財政難が問題になっていました。
現オーナーのキャサリン・ウェイマス女史は、上記のウォーターゲート事件時のオーナー、キャサリン・グラハムの孫娘。
本来、オーナー一族としては複雑な感情があるのでしょうが、ハーバード出のキャリアウーマンだからか、今回のドライなビジネス判断に至りました。
いずれにせよ、今回の「プラットフォーマーに救済を求める」という選択は、経営難の新聞社にとってひとつの生き残り戦略になるでしょうね。
ブランド力のあるワシントン・ポストが前例を示したということで、他の新聞社(また雑誌社も)も「その手があったか」と、次々とこの流れに乗る可能性もあるでしょう。
アマゾンだけでなく、グーグル、アップル、フェイスブックなどのプラットフォーマーは、財政難の老舗コンテンツにとって、神のような救済者、別の表現をすると「駆け込み寺」となるかもしれません。

最後に、アマゾン・ドットコムでなく、ジェフ・ベソス氏が個人で買収した理由について。
アメリカではメディア買収の際に、FCC(連邦通信委員会)という機関から、「クロスメディア・オーナーシップ法」に違反してないかを問われるそうです。
つまり日本と違って、新聞とテレビが同じ資本というのはダメだということ。これは、ジャーナリズムの中立性を担保しようというものでしょう。

しかし今後は、メディア同士の連合ではなく、あまりにも巨大化したプラットフォームとコンテンツの連合が、その中立性を問われるようになると思います。
ベソス氏は、そんなことを危惧して個人での買収としたのではないかなと。
そうだとすると、これは単なる抜け道にしかなってないので、今後は規制が強化されるかもしれません。

まあいろいろ詮索しても、ベソス氏の個人資産からすると2億5000万ドル=250億円などハナクソほどだというから、単なる趣味=コレクションと言えなくもないですけどね。
「ちょっと興味あるから買ってみた」ぐらいの(笑。
いずれにせよ、新聞コンテンツのキンドル配信、他の新聞社の救済動向などなど、今後の動向に注目したいですね。

ZOZOTOWNが広告をやめたことを考える

ファッションネット販売の「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイの前澤社長が、「アジア・ダイレクトマーケティング・ビジョン」で、「スタートトゥデイが止めた10個のコト」という講演をして話題になっていましたね。

【全文】ZOZOTOWN、前澤社長が語る「スタートトゥデイがやめた10のコト」

まとめると、ZOZOTOWNというブランドで、以下のことを止めたということです。
1. 広告
2. ポイントキャンペーン
3. 番組提供「美少女ヌードル」
4. カタログ販売
5. ポイント還元率従来の1%から10%に引き上げ
6. システムの外注
7. 広告販売事業
8. 中国・韓国事業
9. 残業を止めました
10.成果報酬

そう、5つめまではすべて広告の話なんですね。
やめたことに対する、ほぼすべてに共通する理由は、「結構やってきたけど、効果がなくなってきたから」というもの。

確かに当初の広告の目的が、ブランド認知をあげることだったとすると「ZOZOTOWN」という名前が知られるようになった時点で、広告の役割が終わったようにも思えます。

でも、ブランド名の認知が十分になったからといって、広告の仕事がなくなるわけではありません。
コカコーラやメルセデスベンツだって、誰もが知っているブランドですが、ずっと広告を続けていますよね。
実は広告には、企業の成長ステージごとに違う役割があるわけです。
(もちろんここでいう広告は、広義の広告です)

ブランドの認知をあげるのは、同じ商品カテゴリーの中で、自社のブランドを最初に想起してもらうためです。
たとえば、保険に入らなければと思った人に自社の社名やブランドを思い浮かべてもらえるか、車を購入しようと思った人に自社の社名やブランドを思い浮かべてもらえるか、ということです。

その選択肢にブランドが入るまでは、認知をあげる目的の広告は有効でしょう。
じゃあ、そこでその選択肢としてブランドが想起されるようになったとき、広告はいらなくなるか?
いやいや、そんなことはないです。

ブランドを維持していくためには、ブランドのファンになってくれた生活者との関係を維持継続していくことが必要です。
ソーシャルメディアが浸透した今では、ブランドのファンは自ら発信をする広告塔も担ってくれます。
広告は、そんな関係維持の仕事もできます。

また、これまで以上に成長していくならば、その商品カテゴリーの外に競合を想定しなければなりません。
保険が必要ないと思っている人に「ギャンプルより保険が大事かも」と思ってもらうとか、車が必要ないと思っている人に「ゲームよりもドライブが楽しいかも」と気づいてもらうとかでしょうか。
生活者の24時間365日という限られた時間の中で、自社のブランドがどういう場面に位置づけられるかを提案していく必要がでてくるわけです。

とにかく、ZOZOTOWNはすごく伸びているブランドなので、次なるステージに向けて広告もまた違う形でお役に立てるんじゃないかなと思ったわけです。
今のファンや、まだその価値に気づいていない人々に、もっともっと広告ができる仕事があるんじゃないかな、と。

※念のため、僕は関係者でもなんでもないので、いちユーザーとしてのノンキなコメントです。

スマートビエラのCM放映拒否のわけ

パナソニックの新型テレビ「スマートビエラ」のCMを、テレビ局が放映拒否しているということが話題になってますね。

「パナの新型テレビCM拒否 技術ルール違反と民放」

スマートビエラシリーズは、音声で番組やネット上のコンテンツを検索でき、ユーザー認識によってレコメンド提示するなど、かなり次世代テレビの方向性を示した商品だと思います。
今日、たまたまヤマダ電機で見ましたが、音声認識リモコンなどなかなかの優れもので、欲しくなりましたもんね。

で、その放映が拒否されているのは、このCMのようです。

念のため。
僕はこの関係業界にはいますが、事情を知っているわけでもないので、まったくのいちユーザーとして、ノンキに考えてみたいと思います。

ネット上では、「各テレビ局が自社の利権を守るために、意地悪して拒否をしている」という風潮が高まっています。
テレビ局の古い体質で、新しい時代に向けた商品が黙殺されてしまうかのような言われようです。

ただ、テレビ局だって、テレビの受信機が放送とネットの両コンテンツのモニターを担うようになることなど、とっくに理解しています。
だから、拒否の理由はそこではないでしょう。

テレビ局でのCM放映に際しては、考査というものがあって、視聴者に誤認を与えたり、誇大な効果をうたったり、射幸心を煽ったりするものはチェックが入ります。
今回も、なんらか視聴者へのよくない影響を配慮してのものかと考えられます。

ネットの情報をいろいろ見ていると、「ARIB=電波産業委員会」の規約に違反していたからという説が多いですね。
この規約によると、「テレビ放送のコンテンツとテレビ以外のコンテンツが、同一画面に、視聴者の意思に関係なく表示されると、どちらのコンテンツか分からなくなってしまう、それはユーザーが混乱するからダメ」ということらしいです。
実際に、スマートビエラシリーズは、そこが区切りなく同時に表示されるものです。
つまり、商品特性自体が規約違反。これが考査の対象になった可能性は高いでしょう。

でも本来、ユーザーにとって見たいコンテンツが、今放送されているものか、ネット上にストックされているものかというのは、どちらでもいいことです。
音楽業界もiTunesの浸透で、今の楽曲は、常に過去の楽曲と競争しなければならなくなりました。
若い人は、はるか昔の曲を、時代性などあまり気にすることなく聴くようになりました。

コンテンツというものは、今後ますます、出所とは関係なくその価値だけが求められる方向になっていきます。
つまり、ユーザーの意思とは関係なく、テレビとネットのコンテンツが同一画面に表示されるというのは、ユーザーにとってはウェルカムな技術なわけです。
そうなると、この「ARIB」の規約自体が、ちょっと時代に合わなくなってきているのかな、とも思います。

いずれにせよ特筆すべきは、この放映を拒否されたCMが、これだけネット上で見られているという事実です。
「テレビで放映されないCMの方が、みんなに見られるようになった」
テレビ局にとっては、こっちの方が、深刻な意味を持っているように思います。

カンヌライオンズ2013速報④

さきほど、カンヌライオンズ2013は、大盛況の中で閉幕しました。
最終日の授賞式は、会場から人が溢れ入りきれない状況。
僕も階段に座っていたのですが、そこは危ないということで追っ払われ、結局、屋根裏スペースのようなところで這いつくばるようにして観ていました。
しかし、ちゃんとインビテーションカードをもらって入場しているのに、なぜこんな仕打ちを・・・。

さて、最後となった本日は、フィルムクラフト部門、フィルム部門、ブランデッドコンテンツ&エンタテインメント部門、チタニウム&インテグレイテッド部門の発表で締められました。

まずは、フィルムクラフト部門。審査員長はレジェンドのひとり、ジョー・ピティカ氏。
グランプリは、イギリスのTV番組CHANNEL4のパラリンピック放送番宣CM「MEETING SUPERHUMANS」。
ジョー・ピティカ氏は「映像クオリティから音楽までパーフェクトだった」と、コメントしました。

セミナーでもこの映像の制作秘話が語られていましたが、アグレッシブな音楽の採用と、彼らが障がいを持つに至った事故などのシーンを表現するリスクと決断は相当のものだったようです。
それを乗り越えて、この素晴らしいメッセージ、伝わりますよね。会場は、大喝采でした。
そして、このキャンペーンの貢献で、ロンドン五輪からは本当にオリンピックとパラリンピックが、並列で扱われるようになりましたよね。

そしてフィルム部門は、2つのグランプリがありました。審査員長はこれまたレジェンド、ジョン・ヘガティ氏。
2つとなった理由は、ペイドメディア型のものと、インタラクティブ型のもの、それぞれを評価したかったと語りました。

1つ目は・・・出ました、またしても、オーストラリア鉄道、METRO TRAINSの「DUMB WAYS TO DIE」、というか予想通り。
2つ目は、アメリカ、INTEL+TOSHIBAの「THE BEAUTY INSIDE」でした。
こちらは、前回サイバーの時に紹介したものと、違う全体を紹介したビデオをリンクしておきますね。
内容は、毎日姿が変わってしまうある男が恋に落ちる話。外見がころころ変わってしまう中で、彼女に本当の自分である内面を認めてもらうための心の動きを描くストーリー。

次は、ブランデッドコンテンツ&エンタテインメント部門。
グランプリは、アメリカ、INTEL+TOSHIBAの「THE BEAUTY INSIDE」。これで3つ目のグランプリです。
やはり、ストーリー性の高く、ユーザー参加型で展開していくところが評価されたのでしょうか。
映像紹介は、省略しますね。

最後は、チタニウム&インテグレイテッド部門(まだマイナー賞の発表があったので本当の最後ではないですが)。
審査員長は、またしてもレジェンド、ダン・ワイデン氏。
インテグレイテッドと、チタニウムでそれぞれグランプリが発表されました。

インテグレイテッドは・・・えーと、もう言うのも疲れてきましたが、オーストラリア鉄道、METRO TRAINSの「DUMB WAYS TO DIE」。
なんと、今回5つのグランプリを獲得。これ、史上初ですよね。参りました、もう今年はこれに尽きます。
ジョン・ヘガティも、ダン・ワイデンも、スティーブ・ジョブズをまねてか、「この業界で働くものよ、DUMB(マヌケ)であれ」なんて、発言してましたもんね。
受賞者のマッキャン・メルボルンチームは、疲れた様子でダラダラと登壇してきました。
一応、もう一度、紹介ビデオあげますね。
あと、ぜひご自身でYouTubeなんかを検索してみて下さい。
どれだけの人がこのコンテンツのパロディをあげているか。本当にすごいです。

そして、チタニウムのグランプリは、ユニリーバがブラジルで行ったダブのキャンペーン「REAL BEAUTY SKETCHES」。
前評判が高かったものですが、最後の最後にグランプリ獲得となりました。
モンタージュのイラストライターに、顔を見せずに自分の特徴を説明して似顔絵を描いてもらいます。
そのあと、今度は第3者が、自分の顔を見て特徴を説明し、その言葉を元に似顔絵を描いてもらいます。
2つを比べると、後者の方が、あきらかにポジティブで活き活きとした表情をしています。
最後に出る「You are more beautiful than you think.」のコピーが泣かせます。

ということで、今年を振り返ってみると、何と言っても「DUMB WAYS TO DIE」の年。
そして、「THE BEAUTY INSIDE」、「REAL BEAUTY SKETCHES」、この3つが象徴されるものでしょう。
共通する点は、うーん、そうですねえ「人間回帰」でしょうか。
テクノロジーの浸透で、逆により人間の大事な部分が浮き彫りにされてきた、そこをうまくすくえたものが評価されたように思います。
このあたりは、「電通人語」の最終回#3でまとめますので、お楽しみにー(月曜アップを予定)。

さて、ここで終わろうと思ったのですが、もうひとつ紹介しておかなければならないニュースがあります。
例年、デジタルエージェンシーAKQAが主催の「Future Lions」というコンテストがあります。
これは、「5年前だとできなかったけど、今なら出来ること」という課題に、世界の学生たちがアイデアを出すものです。
1,500以上の応募から選ばれ、「フューチャーライオン」が贈られるのはわずか5チーム。
そして今回、日本の学生チームが、その最初に選ばれるという快挙をなしとげました。

慶応、早稲田、東工大の連合チームで、そのアイデアは、「awaken by AMAZON」というもの。
インドは、貧富の差がゆえに識字率の低さと本の不足が課題です。
それを解決するために、アマゾンは購入された本を届ける際、その包装ダンボールに、読み終わった本を入れてもらう。
その本を電子書籍化してお返しし、代わりに紙の本はインド中のお寺や図書館に寄付しようというもの。
ムダなものが何も発生しない、全員にメリットのあるエコシステムです。
うーん、素晴らしすぎる。末恐ろしい。

で、ちなみに聞いた話ですが、慶応の学生さんは電通入社が決まっているらしいです。
よかったー、他に行かずに。

さて、速報はこれで最後になります。(総括みたいなことはしようと思っていますが)
毎度毎度、お付き合いいただきありがとうございました。
それでは、また。

カンヌライオンズ2013速報③

速報①とか②とかやりはじめたもんで、なんか毎日アップする感じになってきましたね。
授賞式でも、全部の発表を必死でメモとっていて、ホントどっかの記者みたいになっています(笑。

さて、カンヌとしては4日目、受賞式典としては3日目を終え、前半戦終了という感じです。
全体の総括的な話は、社のウェブコラム「電通人語」にまとめて連載していますので、ぜひご覧下さい。

ここでは、サクサクーと、受賞関係の報告をしたいと思います。
3日目、まずはデザイン部門の発表からでした。
グランプリは、スーパーマーケットのUCHANが実施した「The Selfscan Report」。
このスーパーが環境問題についての取り組みを説明する際、紙の冊子を使わずにレシートのバーコードからスマホに飛ばすことで対応したというものです。それ自体に紙の冊子を使ってしまうと意味がないですもんね。
「こういう解決発想こそがデザインだ」と、アピールするものだと思います。インフォグラフもかわいく、思わずやってみたくなりますね。

ちなみに、日本勢はこのデザイン部門で大きく気を吐き、電通が手掛けたステッドラー「THE ULTIMATE PENCIL」、コピーライターズクラブ「STICKY NOTE ANNUAL」をはじめとしてゴールドからブロンズまで獲得を連発。
日本は毎年デザイン部門での評価が高いのですが、それがなぜかは「電通人語」で語っていますので、どうぞ。

次はプレス部門。グランプリはAppleが実施したiPad-miniの「TIME」の表4広告でした。
iPad-miniで、電子版のTIMEを読むとこのサイズになるという表現ですが、これも単に表現上の面白さだけでなく、紙版の読者に「なるほど、この大きさならいいかも」と思わせるよう、深く突いていると思います。

ipad_mini_ad_time

プレスで評価されているものは、ほとんどコピーらしいものがないものばかりです。
やはり人種や価値観が入り乱れる中で、言葉の壁を越えても伝わるものが求められているんでしょうね。
日本はコピー文化なので、ここはすごく弱い分野だと思います。

そして、ラジオ部門。グランプリはまたしても、オーストラリアの鉄道、Metro Trainsの「Dumb Ways to Die」。
もう3つ目のグランプリですね。前半戦は、この施策に尽きると思います。
ちなみに他のラジオでも、歌ものが多いなあと思いました。ストーリーテリングに、歌という手法は有効のようですね。

最後は、サイバー部門。グランプリは2つありました。
ひとつは、これもいろんなところで受賞しているOREOの「Daily Twist」。
OREOの100周年ということで実施された施策で、毎日の社会ネタですぐにオリジナルOREOをデザインして発表していくもの。
OREは、スーパーボウルでもリアルタイムのツイッター施策が話題になりましたが、旬をユーザーと共有していくということにすごく力を入れていますね。
ただ、サイバーのグランプリというのは驚きました。

もうひとつのグランプリは、intelと東芝「The Beauty Inside」という協同施策。
「intel inside」のリフレッシュ施策に東芝もウルトラブックのブランディングということで参画しています。
内容は、ハリウッド初のソーシャルフィルムということで、毎朝起きるたびに別の人間になっているというストーリーに、一般ユーザーが参加していくというもの。ストーリーの面白さは・・・正直ちょっとわかりません。

にしても、今年のサイバーは特徴的ですね。
デジタルテクニックに走るわけでなく、リアルとの融合で、ユーザーを巻き込んでいるものが評価されているようです。
ちなみに、日本からはユニバーサルミュージックの「PERFUME GLOBAL SITE PROJECT」などがシルバーを獲得していましたが、ゴールドはなし。うーむ・・・。

ということで、後半戦も「Dumb Ways to Die」が暴れるのでしょうか、お楽しみにー。

カンヌライオンズ2013速報②

カンヌは3日目を終えましたが、ビーチサッカーの大会が始まったり、GALAパーティーが開催されたりと賑やかになってきました。
セミナーでは、GoogleやFacebook、Sapientnitroといったところが「ストーリーテリング」というワードを連発。
それぞれがこのワードを都合よく解釈して使っていて、定義がバラバラなのがなんか面白いのですが、それはまたどこかでじっくりまとめます。

さて、受賞関係の紹介です。
まずは、アウトドア部門。グランプリは、フランスのIBMが実施した「Smart Ideas for Smarter Cities」。
ビルボードに雨よけがついていたり、ベンチになっていたりと、いわゆる「使ってもらえる広告」ですね。
以前、フォルクスワーゲンがスウェーデンで実施した「ファン・セオリー」を彷彿させます。
ちょっと、ブランドに落ちていない気もしますが・・・。

そして、モバイル部門。発表の際に、審査委員長のレイ・イナモトさんが、印象的なデモンストレーションを行いました。
会場の照明を落とし、みんなが持っているスマホを舞台側に掲げるようにいいました。
レイさんは、星空のようになった会場を舞台側からスマホで撮影し、そのままハッシュタグをつけてツイートしました。
その写真は、数秒後にツイッターを通じてみんなの手元に届き、レイさんは「これがモバイルのパワーだ」と語りました。
うーむ、素敵。説得力がありますねえ。
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グランプリは、フィリピンの通信会社、TXTBKSが実施した「Smart Communications」という施策。
毎日、重い教科書を持ち運ぶ子供たちは、背骨が歪んでしまったりと深刻な状況。
これを解決するために、携帯電話のSIMカードに教科書情報を入れ、使わなくなった携帯端末を電子書籍のように使ったというものです。
子供たちの荷物は軽減され、成績や出席率も向上したとのこと。子供たちの未来に貢献する本当に素晴らしい施策です。
(ま、「あのデモンストレーションのあとに、グランプリでSIMカードかよ」という気持ちもありましたが)
ちなみに、フィリピンは初のグランプリ獲得とのこと。

日本からはPARTYが手掛けた、GOOGLEの 「WORLD WIDE MAZE」がゴールドに選ばれました。

次は、今年から新設されたイノベーション部門。
ショートリストに残った施策は、なんと審査員全員の前でプレゼンする(一般参加の人も見れます)というプロセスを経て決まります。
で、グランプリは、「Cinder」というアメリカのBarbarian Groupが開発したクリエイティブ・コーディング・プラットフォーム。
プレゼンでは、テキサスから来たというプログラマーの熱弁に、会場一同ポカン顔の様子でしたが、すでにこれまで映像や音楽やグラフィックに係るあらゆるデジタル施策に活用されてるオープンソース・ツールであり、まさにこういったものを表彰する場がなかったから新設された賞なのでしょう。

ゴールドも、カード上に残高が表示されるデビッドカードや、表と裏の2スクリーンあるモバイルなど、本当に実用化が望まれるものばかりでした。

最後は、メディア部門。グランプリは、オランダの葬儀用保険会社、DELAが実施した「Why Wait Until It’s Too Late」という施策。
日本語でいうと、「いつやるの?今でしょ」という感じでしょうか。
「大切な人が死んでしまう前に、気持ちを言葉にして伝えよう」というもので、いろんな施策を織り交ぜて展開されました。
メディア部門というのは他の部門と違って、審査員もメディア畑の人が中心。なのでクリエイティビティの基準が他とちょっと違う感じですが、まあ、あらゆるメディアを駆使して大きなコンセプトを伝えきったという点が評価されたのでしょうか。(とにかくメディアが売れないと困るわけですから)

日本からは、TOYOTAの「 AQUA SOCIAL FES!!」がゴールドに選ばれました。やっと電通からですね。

今日はこれくらいですね。また続報あげます。

カンヌライオンズ2013速報①

カンヌも2日目が終わりました。
2日目から怒濤の受賞発表ラッシュになっていきます。
今日はPR部門、プロモ&アクティビティ部門、ダイレクト部門、クリエーティブエフェクティブネス部門が発表されました。

これらの部門は、アイデア評価の基準がかぶるようで、ここ数年グランプリが重なることが多くなっています。
で、今回は、オーストラリアの鉄道「Metro Trains」の事故防止を啓発するアニメソング「Dumb Ways to Die=マヌケな死に方」が、PRとダイレクト部門のダブルグランプリ受賞となりました。

これはもはや、世界的に有名になったキャンペーンですね。これまでにいろんな賞を獲りまくっているので、あちこちで紹介されています。
かわいらしいアニメソングで、いろんなマヌケな死に方を紹介していき、最後にもっともマヌケなのは電車にひかれて死ぬことだというオチ。
怖いことを可愛く仕立てたクオリティや、拡散のための細かな導線つくりも評価されていますが、僕は単純に曲がいいことが勝因じゃないかと思っています。
本当に、一回聞いたら忘れられない親しみやすさです。
授賞式のあと、近くのレストランでシーフードを食べましたが、あちこちでこの曲を口ずさんでる人を見ました。そりゃあ、広まりますよね。

で、一番大事なことですが、実際に列車での事故死も前年比から21%も減ったとのこと。
要するに、このアニメソングが、本当に多くの人の命を救ったということなんですね。
まだまだ他の部門賞も獲得しそうな勢いです。

プロモ&アクティベーション部門のグランプリは、ブラジルの「Recife」というサッカーチームによる「Immortal Fans=永遠のファン」という臓器ドナー登録促進キャンペーンでした。
臓器提供を受けた人は「Recife」のファンになることを約束するというもので、Recifeのサポーターたちが、自分の体の一部が永遠にファンであり続けることを願って、5万人以上登録したとのこと。
これも見事なアイデアで、人の命を救うことに貢献していますね。

その他の結果は、カンヌライオンズの本サイトへ。
WINNERS & SHORTLISTS

そして、セミナーでは、コカコーラが相変わらず素晴らしいプレゼンテーションをしていました。
世の中に新たな価値を生み出すコンテンツで、グローバルへのコミットメントを示すといっていて、もうブランドとして目指している次元が違っている感じですね。
有名になったインドとパキスタンをつないだ「Small World Machines」と名付けられたベンダーマシンが紹介されました。
本当に素晴らしいです。

今日のところはこれくらいで。また続報をあげますね。

僕にとってのカンヌに来る理由

今年もフランスのカンヌにやってきました。
もちろん、明日から開催される、カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル2013(長い名前だなあ)に参加するためです。
今回は60回目の開催ということで、注目度が高く、審査員にも広告界のレジェンドと呼ばれる大御所たちがずらりと揃えられています。
いろんなブログなどでも、事前予想なんかで盛り上がっていますので、ご興味のあるかたは検索してみてください。

で、開催の様子は明日以降にレポートしていきたいと思いますので、ここでは「そもそもなんで、毎年こんな遠くまで来る必要があるのか?」という、僕にとってのカンヌに参加する意味を考えてみたいと思います。

cannes2013

1. 業界の最先端とその潮流を自分の目で見るため

カンヌは、広告業界では最も権威ある賞と祭典のひとつです。
そこで起きていることを、自分の目で見るというのは、ビジネスマンにとって、すごい武器を仕入れることになります。
きちんと現地で確認してきたことには、誰も反論できなくなります。
あんまりいい言い方ではないですが、ビジネスの上で情報優位に立てるわけですね。

2. 見本市からアイデアを学ぶため

ちょっと前まで、カンヌといえば授賞式としてのお祭りのようなイメージがありました。
しかし、今は違います。
セミナーやワークショプも充実し、世界中から集めたアイデアの見本市の様相を呈しています。
「その手があったか!」と膝を打つアイデアが満載で、これ以上ない学びの場となっているわけです。

3. ネットワーク作りとモチベーションアップため

ここに集まってくるのは、業界の中でもやはり意識の高い人ばかりです。
普段は競合となるエージェンシーの方々とも、こんな場だからこそ仲良くなって、情報交換ができたりします。
その後は日本に帰ってからも飲みに行く仲になったり、これは本当に不思議な感覚です。
年に一度くらいは、そんな刺激の場を作って、自分のモチベーションアップに活用したいというわけですね。

まあ、こんなメリットを実感してしまったため、はるばる二十数時間もかけて、クタクタになりながらも来ちゃうんですよね。